北欧デザインの魅力と特徴について探る

北欧デザインの魅力

世界中で愛されている北欧デザイン(スカンディナヴィアデザイン)はどのような歴史と特徴があるのでしょうか。
実は機能性やアイデンティティがかなり確立されたデザインということはご存じでしたでしょうか。
北欧デザインの魅力について探っていきたいと思います。

北欧デザインとは

北欧デザインというと、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドの国々から派生したデザインスタイルを指します。

もともと、「スカンディナヴィアデザイン」という言葉は1951年に、ロンドンにある「Heal’s」という有名な家具店で北欧の家具を集めた展示会が開催され、その時の展示会の名前が「Scandinavian Design for Living」だったのです。
この時に展示された作品がミニマムで機能的、かつ自然派であると評価され、世界中に広まっていきます。

第二次世界大戦後の工業デザインの中心はバウハウスがつくりあげたドイツ(ベルリン)のデザインでしたが、ナチスの弾圧により、以降はアメリカのデザインが世界の中心となります。
その後、家具などの工業デザインの世界ではいわゆる「ミッドセンチュリー」というデザインスタイルに移り変わりますが、北欧デザインは独自の路線で世界に発信し続け、世界的にオリジナリティがあるデザインスタイルとして注目が集まりました。

北欧スタイル

北欧デザインの特徴

北欧諸国では一年を通して日照時間が短く、厳しい冬の期間も長いため、家にいる時間が長くなります。
ですので、室内での生活を充実したものにさせなければなりません。
そのため北欧デザインにとって美しく機能的であることは、必須です。
家具や調度品は暮らしの中に溶け込むようなスタイルが前提にデザインされます。
また、室内の雰囲気を明るくするためにも色彩が豊かであったり、光や温かいものを感じるものが多いことも特徴です。

北欧デザイン
機能的で自然派なスタイルが提唱される
マリメッコ
出典:marimekko

森や湖畔など自然豊かな風土の北欧では、動植物をモチーフとしたデザインや優しい風合いのものが多くあります。
実は北欧は工業化が進んでいたヨーロッパに比べ工業化の発展が遅く、職人の技術を大切にする文化が根強くありました。
そしてのちに広まる、合理主義としての工業化と職人性のちょうどよい融合が、
北欧デザイン特有の機能性があり美しいデザインを生み出す結果となりました。

デザイナーが育ちやすい環境

北欧ではデザイナーの育成に力を入れている国が多く、優秀なクリエイターが育ちやすい環境でもあります。
マリメッコで有名なフィンランドではデザインをイノベーションの一分野としてデザイン教育に国をあげて力を入れていますし、なにより学費が無料なのでのびのびとアートやデザインが学べる土壌があります。
デザインされたプロダクトにはデザイナーの名前がクレジットされることが多く、クリエイターのモチベーションを上げる工夫もされています。
IKEAやH&Mを生んだスウェーデンでは優秀なデザイナーを多く輩出しているデザイン大国ですし、街自体も首都ストックホルムは「世界一オシャレな首都」といわれています。

ストックホルム
ストックホルム

IKEA

スウェーデンが生んだIKEAのデザインは白ベースのプロダクトが多い印象ですが、
雑貨などはカラフルなものが多く、部屋を楽しくさせるようなデザインが特徴です。
北欧らしいシンプルで機能性が優れた製品を開発し続けています。
世界中で愛された理由としては、デモクラティックデザインというデザイン開発の概念を大切にして、「みんなのデザイン」を意識して流通させたことでしょう。
さらに、フラットパックと言って組み立て式にして段ボール輸送を可能にし、ロープライスで提供できたことも大きな魅力になっています。
また、世界中で3,000万脚売れたポエングはIKEA初の日本人デザイナー中村昇氏がデザインを手掛けています。

IKEA

マリメッコ

フィンランド発のマリメッコは普遍的なデザイン性があり、流行に左右されないような力強さをもっています。
歴代の経営者やデザイナーがみな女性であり(男性経営者の時代は不遇の時代になったそうです)ブランド立ち上げ当初から、「自立した女性の魅力」をテーマに展開しています。
デザインの大きな特徴として、このカラフルでポップなデザインは手書きから始まります。
デジタルにはない独特な有機的な力強さがあるのですが、これはマリメッコのイメージを形作った女性デザイナー、マイヤ・イソラから始まったものです。
手書きなので線が揺れているのですが、このような有機的な質感がマリメッコの印象を特徴づけています。
以降、このスタイルはマリメッコ哲学として歴代のデザイナーに受け継がれてゆきます。

マリメッコマリメッコ

フリッツ・ハンセン

家具デザイン史において数々の著名デザイナーを生み出してきたデンマーク。
その中でもモダンデザインの礎を築いた巨匠、アルネ・ヤコブセンなどとコラボレーションをしてきたフリッツ・ハンセンは質の高い家具を作り続けています。
50年代に発表した「アントチェア」「セブンチェア」「グランプリチェア」はフリッツ・ハンセンを象徴するようなチェアとなり、人気を不動のものとしました。
現在もその哲学を受けつつも、現代の生活様式に合ったデザインを生み出しています。

「アントチェア」「セブンチェア」「グランプリチェア」
左から「アントチェア」「セブンチェア」「グランプリチェア」

バング&オルフセン

1925年設立のバング&オルフセンはデンマークのオーディオメーカでインダストリアルデザイン史において強い影響力を持っています。
製品開発はデザイナーが行い、世界的に高い評価を受け続けています。
また、代表作品は世界的なプロダクトデザイナー、ヤコブ・イェンセンが手掛けたものが多く、18製品がMoMAのパーマネントコレクションに選ばれています。
2012年に導入したカジュアルラインであるB&O PLAYは細部までデザインにこだわった非常に現代的で優れたデザインになっています。

バング&オルフセン
バング&オルフセン「Beosoun」

北欧デザインは流行に安易に迎合しない

北欧デザインの魅力は歴史的に見て、流行に安易に迎合せず、機能的で北欧特有の美意識を極限まで高めた点です。
普遍的であり、生活に寄り添ったデザインは世界中に受け入れられ日本でも大人気のスタイルになっています。
北欧デザインからクリエイティブのヒントを探ってみてはいかがでしょうか。