90年代の日本のロックシーンのアルバムジャケットを振り返ってみたいと思います。90年代は様々なバンドがデビューし、ジャンルも細分化されていったと感じます。
渋谷系といわれるジャンルのバンドが90年代に一世を風靡しましたが、フリッパーズギターやピチカート・ファイブのアルバムジャケットはどれもとてもカラフルな色遣いで、ヨーロッパなどの外国のエッセンスを取り入れた、オシャレな作品が
多いです。これらはアートディレクション界の大御所、信藤三雄が手掛け、後の渋谷系のビジュアルの世界観を決定づけたといわれています。
コーネリアスの「FANTASMA」のアルバムジャケットも信藤三雄が手掛け、世界的にも評価が高いです。

フィッシュマンズ「ネオ・ヤンキース・ホリデー」などは木村豊(Central67)が手掛けたもので、木村豊はスピッツや椎名林檎などのジャケットデザインも数多く手掛けています。
ガレージロックやロカビリーの要素を取り入れた、ブランキージェットシティやミッシェルガンエレファントなどのバンドもデビューし、ジャケットデザインにおいても名作を多く生み出しました。
ミッシェルガンエレファントの「High Time」などは独特の暴力性が表現されていて秀逸な仕上がりになっています。
90年代後半になるとオルタナティブロック勢が台頭し、くるりやスーパーカー、ナンバーガールといった2000年代にかけてフォロワーを多く生み出した先駆的なバンドが活躍しました。
アルバムジャケットに注目すると、スーパーカーの「HIGHVISION」やくるりの「図鑑」などは80年代にはない<新しい音>を連想させますし、ナンバーガールのジャケットなどはボーカルの向井秀徳直筆のマンガ絵が採用されていて、個性的なデザイン(アートディレクションはeyepop)になっています。
ゆらゆら帝国のアルバムジャケットなどもボーカルの坂本慎太郎の手によってイラストが描かれ独特の世界が表現されています。

また、アメリカのヘヴィロックの隆盛もあいまって、90年代後半は多くのメロコアやスカコア、ハードコアバンドが日本でも急速に支持を集めました。
インディーロックシーンを牽引したハイスタンダ―ドの出現は「インディーブーム」を作り出し、多くのキッズを虜にしました。
2ndアルバムの「ANGRY FIST」のデザインはユニクロのアートディレクションなどを手掛けた佐藤可士和のものです(ギターの横山健の高校の同級生との事で佐藤可士和が手掛けたみたいです)。

ドラゴンアッシュも多大な影響を受けた、マッドカプセルマーケッツなどはミクスチャーの先駆け的なバンドで、ビジュアル周りのアートワークは、彼らの音楽性と非常にマッチしていると思います。(アートディレクションはPOSITRON)
90年代は様々なバンドが出現し、邦楽ロックが盛り上がった時代だと思います。
技術の発展により、ミュージックビデオも80年代とは比べ物にならないくらいクオリティの高いものが多くあります。
80年代から90年代にかけて媒体がレコードからCDに変わっていた経緯もありますので、昔のデザインと比べてみると面白い発見があるかもしれません。