超絶シュールアニメ作家「ルネ・ラルー」がアツい

ルネ・ラルーというアニメ作家をご存知でしょうか。
フランス出身の作家なんですけど、この人の作るアニメがとにかくシュールで面白い。

代表作の「ファンタスティックプラネット」は、カンヌ国際映画祭ではアニメ史上初の審査員特別賞受賞し、現在でも熱狂的なファンがいます。ちなみに昔、DVDをネットで買おうとしたら、30,000円くらいしてめっちゃ高かったのですが、リバイバルされたのか、今なら2,000円台で買えます(2021年12月時点)。大きめのツタヤに行っても置いていないのでこれは買いですね。

「ファンタスティックプラネット」はステファン・ウルのSF小説「オム族がいっぱい」を原作とし制作、1973年に公開されました。フランスとチェコスロバキアの合作なのですが、日本では1985年に公開されています。たった72分の作品なのですが、初めて鑑賞した時は衝撃的でした。

11ストーリーは巨人である「ドラーグ族」と小人「オム族」の戦いの話で、ドラーグ族が小人オム族を虫けらのように殺戮し、オム族はそれに立ち向かって戦ってゆくという侵略戦争みたいなストーリーです。両者とも文明があるのですが、巨人である「ドラーグ族」は高度な文明を持っており、子供の教育方法がヘッドセットを装着し知識を送り込む、といった、なんともシュールな設定。さらに、一日の多くの時間を「瞑想」に費やすという設定です。一方のオム族は地球人に似た容姿で、原始的な文明レベルなのです。

03母親を殺されたオム族の少女が、ドラーク族の子供にペットにされて、「テール」と名付けられます。このテールがドラーグ族から逃げ出し、オム族の集落に入り、反乱を起こしていきます。このあたりの設定は「GANTZ」の最終章を思い起こさせました。

05劇中で様々な生物や、植物まがいのものが登場するのですが、造形が独特で気持ち悪いです。このあたりの描写は、宮崎アニメの「風の谷のナウシカ」に影響を与えているようですよ。

01ルネ・ラルーは一時期、精神障害者の施設で働いていたことがあり、その時の経験から「ファンタスティックプラネット」の着想を得たそうです。

制作方法としてはキャラクターを絵具や色鉛筆で描き、それらを切り抜いて背景の上で一つ一動かすといった、非常に手間暇かけた切り絵アニメの手法を用いています。制作期間は、4年ほど掛かったといわれています。絵がそのまま動くため、独特のモーションが構築されるんですね。この点については宮崎駿は否定的で、多くの「ジャパニメーション」に見られるような躍動的な動きがあってこそがアニメだ、と言っているようですが。

02劇中に使用されている音楽も秀逸です。ジャンルとしてはジャズなんでしょうか、電子音楽を基調としたサイケデリックな音楽も、見事に作品の世界観にマッチしています。サントラも上映後20年の時を経て、CD化されました。ジャケットもオシャレですね。欲しい。

04ちなみにシネフィルイマジカからの映画でした。このレーベルから出てる映画はどれもシュールで前衛的なものが多いので、少し変わった映画が楽しめますよ。

12ルネ・ラルー作品は、このほかにも「時の支配者」や「ガンダーラ」などが有名です。「時の支配者」は、大友克洋などが大きな影響を受けた、フランスの作家メビウスとの共作で、ジャンルとしてはSFアニメです。こちらも色使いやキャラクターデザインが独特で、秀逸な作品になっています。未来世界”ガンダーラ”に生きる人々を描いた「ガンダーラ」も素晴らしい作品です。

ただ、これらの作品はまだ高値での販売なので、購入をためらうかもしれません。リバイバルとして安くなることを願いたいです。

アニメ作家として現在も評価が高いルネ・ラルーですが、このテの映像作家ならユーリ・ノルシュテインヤン・シュヴァンクマイエルアレハンドロ・ホドロフスキーあたりの作家もおすすめします。