ネットでの音楽配信が主流になりつつありますが、ジャケットデザインは音楽の世界をイメージするための一助になったり、また、モノとしてのCDやレコードのプロダクトは、リスナーの所有欲を満たしてくれるものでもあります。
90年代、邦楽のアルバムジャケットは素晴らしいデザインが量産されました。
この時代のデザインの特徴を振り返ってみたいと思います。
筆者が思うに、90年代のジャケットデザインは写真をうまくトリミングした作品が多い傾向に感じました。
globe「globe」や安室奈美恵「sweet 19 blues」のジャケットデザインなどは、うまくトリミングをされているのが分かります。
また、アルバムジャケットだけに限った傾向ではありませんが、どちらかといえば、80年代はグラフィックデザインの分野は色彩が豊かでキツイ印象もありましたが、90年代に入り要素が整理され、デザインは洗練されていきます。
モノクロやセピア色で制作されたビデオクリップやジャケットデザインを多く見るようになったのもこの時代からだと感じます。
また、80年代は彩度の高いビビッドな色使いや蛍光色、幾何学パターンなどを多用するようなグラフィックデザインが多く見られましたが、90年代は色彩的にはやや落ち着き、モノトーンで表現されたようなデザインも多く見られるようになりました。(ちなみに80年代の明るく鮮やかで特徴的なデザインは、多国籍デザイン集団「メンフィス」がルーツを生み出したと言われています)
90年代は80年代のギラギラとした世界から脱却し、PUFFYなどをはじめとする、カジュアルで脱力したポップミュージシャンも多くデビューし、新しい時代を築き上げたといってもいいでしょう。ビジュアル周りに使用される色彩もどことなく、彩度を抑えたカジュアルなものが多い印象を受けます。
また、Xジャパンの功績によりビジュアル系と呼ばれるバンドも90年代に入りメジャーシーンでブレイクし、美意識が高いアートワークが展開されました。
ゴシック色が強かったり、アバンギャルドな世界を構築したりと、独特の様式美がポップシーンにも広く支持されました。
デザイナーでいえばスピッツや椎名林檎などのデザインを手がけた木村豊(Central67)、安室奈美恵やJUDY AND MARYなどを手掛けた宮師雄一率いるタイクーン・グラフィックス(残念ながら現在は解散)、Mr.Childrenなどを手がけた信藤三雄などが台頭し、90年代の邦楽シーンで活躍しました。
彼らは卓越したトリミングテクニックで、名作を量産しました。アーティストが生み出す世界観や特徴をドンピシャに表現しています。広告やその他のグラフィックデザインにも与えた影響は大きいかと思います。
80年代頃から現在までのジャケットデザインの変遷を追っていくと、新しい発見があり、面白いかもしれません。