アルバムアートワーク界の巨匠、「ヒプノシス (Hipgnosis)」 をご紹介します。
ヒプノシスはイギリスが生んだデザインチームで、メンバーはストーム・ソーガソン、オーブリー・パウエル、ピーター・クリストファーソンの3人体制です。
70年代を中心としたロック好きの方なら一度はヒプノシスがデザインしたジャケットを目にしたことがあるでしょう。
ピンクフロイドやレッド・ツェッペリン、10ccやブラックサバスなど往年のバンドのジャケットデザインを手掛けている事から、ロックファンにとっては馴染み深いものとなっています。また、日本人アーティストでは松任谷由実や佐野元春のアルバムアートワークを手掛けています。
ヒプノシスの結成
ヒプノシスは1968年にストーム・ソーガソンとオーブリー・パウエルが結成し、ロンドンを中心にデザイン活動をはじめます。当初は商業印刷物をメインに仕事を受けていました。
その後、友人であったピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズから2ndアルバム「神秘」のジャケットデザインを依頼され、本格的に音楽産業でのキャリアを築いていきます。
1974年にピーター・クリストファーソンが加わり3人体制となります。
その後1983年にチームは解散しますが、ストーム・ソーガソンがヒプノシスのデザインを受け継ぐことになります。
デザインの特徴と功績
レコードジャケットはそれまで単に宣伝用のデザインとして捉えられている傾向がありましたが、ヒプノシスは視覚芸術として高めました。レコードジャケットを単なる販促用のデザインから芸術に高めた功績は大きいです。ヒプノシスのデザインに惹かれていわゆる「ジャケ買い」をした人も多くいるハズです。
デザインの特徴としては、写真を使ったアートワークが大半を占めており、
直接的に想像力を掻き立てられるような表現が多くあります。
現実なのか非現実なのか、微妙なニュアンスを表現することによって、
観るものに自由にストーリーを持たせ、独特な余韻を与えます。
鑑賞者に「考える」余地を与えることによって、非常にイマジネーションに溢れた作品を作り出しているといえるでしょう。
青空、浜辺、砂漠、草原などのモチーフをうまく使い、神秘的なイメージ作りも得意としていますね。
また、音源を聴かずに制作することもあるそうです。
ヒプノシスは解散後もストーム・ソーガソンが意思を受け継ぎ、90年代以降も精力的に優れたアルバムアートワークを量産し続けました。
筆者的には合成技術の進化により、70~80年代より表現の幅が広がってきているのではないかと感じます。
1983年に解散。372作品を手掛けた
惜しくも1983年にチームは解散し、2013年にヒプノシスデザインを受け継いだストーム・ソーガソンが他界してしまいます。ヒプノシスが手がけたアルバム・ジャケットは現在までに372作品。今でもその作品群は渾然と輝き続けています。