私たち消費者がモノを買ったり、サービスを選ぶときどのような心理状態で消費活動を行っているのでしょうか。
人間は経済活動を行う上で、常に合理的な行動をとっているのか言われればそうではありません。
例えば
・味はイマイチだけどいい雰囲気のカフェに入る
・宝くじやギャンブルで当てたお金を一気に散在する
・体に悪いと知っていながらタバコを吸ったり酒を飲む
など、人間は合理的な判断をせず、感情やバイアスで消費行動をすることがあるのです。
人間は自己の感情を完璧に自制させることは不可能で、目の前の魅力や快楽を選択する傾向があり、合理的な判断ができない場合があります。
このように感情やバイアスで経済活動を行う人間の心理を研究した学問が行動経済学です。
この学問は比較的新しい学問であり、2002年に心理学者のダニエル・カーネマン、エイモス・トベルスキー、 経済学者のリチャード・セイラーらによって生み出されました。
この行動経済学がマーケティング分野に大いに利用できると近年注目されています。
行動経済学を応用して売り上げや集客をアップさせることが出来るというのです。
いくつかの手法が確立されており、代表的なマーケティング手法をご紹介します。
皆さんもどこかで見たり聞いたりした記憶があるはずです。
webサイトでも行動経済学の知見を取り入れたマーケティングは非常に有効です。
以下に代表的な8つの手法をご紹介します。
ハロー効果
バイアス効果の一種で、特徴や肩書、権威などによってサービス自体の評価が歪んでしまう現象です。
わかりやすく例を出すと、例えば製品やサービスを選ぶとき、
・<学歴や肩書などが優れた人>が進めた教材を使えば成績がUPするだろう
・<好感度の高い有名人>が使っている化粧品は効果が期待できそうだ
・<有名な高級ブランド>の製品はデザインも質もいいに違いない
などと思った事はありませんか?
人は先入観として一面的な部分を全体的な評価にしてしまう傾向があります。
<フォロワー○○万人モデル、○○さんも愛用>
<東大卒の講師が監修する~>
などの広告コピーを見たことがあったり聞いたことがあるかと思います。
このような権威や特徴によるバイアス効果をハロー効果と呼びマーケティングに応用されます。
バンドワゴン効果
集団心理・群集心理的に人気があったり流行になっている製品、サービスは売れやすい傾向があります。
例えば旅行先のお店選びでAの店に入ると決めていたとしましょう。
しかしネットでBの店をみると圧倒的に口コミ数の数が多かったりSNSのいいね!の数が多かったりすると 集団心理が働きBの店を選んでしまうのです。
「利益を得たい」と「損したくない」の感情を天秤にかけると多くの人が「損したくない」と感じ、 人気がある製品やサービスを選びます。
これは「人気だからいい製品やサービスのはずだ」という心理状態になるのです。
広告において
・会員数○○万人突破!
・累計売上○○億個!
・売り上げNo1
などという表記を見たことがあるかと思います。
これは「人気」を指標にしてユーザーに製品の信頼性を伝えているのです。
また、人気イコール<流行>にすることが目的なので SNSでのマーケティングに特に親和性がありインフルエンサーが発信したり、いいねの数を増やすことによって爆発的に効果が期待できるとされています。
ヴェブレン効果
人は「価格が高ければ高いほど特別なモノ、サービスである」と感じる傾向があります。
高ければ高いほど希少性や特別性を感じ、それを所有したりサービスを受けることで 他の人には手に入らないものを享受し、自己顕示欲が満たされた気持ちになるのです。
高価格のもに価値が生まれ、そして新たな需要が生まれていく現象。
それがヴェブレン効果です。
他人に羨ましがられるようなものではないといけません。
SNS全盛のこの時代に非常にマッチした手法とも言えます。
ただし、他人に羨ましがられる効果を期待するものなので、有名ブランドなど一般的に認知されているものではなくてなりません。
マニアックな製品やサービスですと希少性はあるかもしれませんが、それを見て私も欲しいといった母数が少ないからです。
ヴェブレン効果を発揮させるには増殖するような新たな需要が必要です。
ジンクピリチオン効果
意味が分からない専門用語や難解な言葉を使って興味を持たせる効果です。
「業界初●●●配合!」「独自技術●●●使用!」
など、 主に化粧品や洗剤、コーヒーなどの広告で聞いた記憶はありませんか?
良く分からないけどなんだか凄そう!
という興味をもたせ、購買につなげる手法です。
言葉の響きだけで消費者は心理的に、<凄そうだ>という感情が動いてしまうのです。
昔、花王が製品のキャッチコピーに「ジンクピリチオン配合」と記載したところ 「ジンクピリチオンってよくわからないが、なんだか凄そう」という消費者の心理が働き大ヒットにつながったという逸話があり、そこから命名されたそうです。
アンカリング効果
最初に提示した数字の影響を受けやすいという現象です。
「通常価格の○○%OFF!」「3,000円→今だけ1,500円!」
などの表記を見たことがあると思います。
人は最初に提示されている数字に影響を受け、お得感を感じやすいという傾向があります。
しかし、通常価格である実際の価値などはわかりません。
市場の価値が一定の価格で固定されている場合、発揮はしにくいです。
例えばカップラーメンや缶ジュースの相場などは大体同じなので、効果は期待できません。
また、一定の専門知識を持つ層にも効果は期待できません。
例えば不動産や土地など、知識を持たない人には金額の相場などはわかりませんが 専門知識を持つ人には見透かされ効果は期待できないでしょう。
また、不当な金額表示にならないよう「景品表示法」に違反しないように注意しなければ なりません。
フレーミング効果
見せ方や表現の方法で受け手の印象が変わる現象をフレーミング効果といいいます。
例えば
「抽選で100,000円当たる!」と「抽選で10万円当たる!」
「1日あたり33円のお支払い」と「月々1,000円のお支払い」
「分割払い可」と「クレジットカード利用可」
「顧客満足度98%!」と「満足しなかったお客様たったの2%!」
どちらが魅力的に映るでしょうか?
本質的には同じなのですが表現方法や伝え方によってお得感を感じさせたり、印象を変える手法です。
「フレーミング」とは「切り取り方」を意味していて情報を強調したり見せ方を変えることによって 印象を操作できるのです。
確証バイアス
思い込みや認知の偏りが起こるバイアスの一種で、肯定的な情報を収集しようとする現象です。
例えばリターゲティング広告などで何度も同じ広告をみたとします。
するとユーザーはこの商品は「人気のある商品なんだと」思い込んでしまうのです。
するとその製品について肯定的な感情がわき、情報を集めようとします。
この感情を持つと非常に強く働き、購買や集客に有効ですのでマーケティングにおいては効果を期待できます。
日常生活でも確証バイアスは潜んでおり、占いなどで誰にでも当てはまりそうな事を自分にとって都合良く解釈したり、 恋愛においても好きになった対象の相手の良い部分のみしか見ないといった偏りがある状態も確証バイアスの一種です。
非常に強い効果を期待できますが、詐欺行為などにも使われている手法のためマーケティングにおいては悪用厳禁なので注意が必要です。
希少性の法則
入手が困難なものに対して価値を感じる現象を希少性の法則と呼びます。
人は需要に対して数が少ないものに希少性を感じます。
そしてその結果価格が高騰します。
たとえばコロナ禍において「おうち時間」なるものが出来て、家具や電化製品など様々なものが売れましたが 中には品薄になった製品もあり入手が困難になりました。
そして消費者の間で「希少性」が醸成され本来の相場以上の価格に高騰しました。 マーケティングにおいては「期間限定」「限定○○個」「残り〇個」など数において希少性を発揮させた手法が多く取られます。
タイムセールを実施したり、限定モデルを作りだす方法も希少性の法則を利用したマーケティング手法です。
今回は行動経済学の知見を使ったマーケティング手法を代表的なものを7つご紹介しましたが、 使える手法はまだまだあります。
次の記事では実際にランディングページにおいて具体的にどのように使うのかをご紹介していきたいと思います。