イギリスのインディーレコードレーベル「4AD」は1979年、アイヴォ・ワッツ=ラッセルとピーター・ケントによって設立されました。そして、グラフィックデザイナーであるヴォーン・オリヴァーを招き入れます。ヴォーンは写真家のナイジェル・グリーアソンとタッグを組みデザインチーム「23 Envelope」を結成し、4ADレーベルのアートワークを手がけます。
耽美的で退廃的な一連のアートワークは4ADのレーベルカラーとして確立します。ロックレーベルとしては独創的なレーベルとなり、PixiesやCocteau Twins、Bauhaus等の人気バンドが所属するレーベルとして世界中に認知されるようになります。
ビジュアル周りのアートワークを確立し、レーベルカラーを強く打ち出すのは一種のブランディングでもあります。視覚面からレーベルアイデンティティを確立していくのは、音楽業界としては希有な存在であり、異彩を放っているともいえるレーベルでしょう。
この記事ではそんな「4AD」が紡ぎだす、耽美で退廃的でどこか狂気性を感じさせるアートワークを紹介し、酔いしれたいと思います。
耽美で幽玄、ゴシック的な世界が特徴
アートワークの特徴として、「耽美」「幽玄」「ゴシック」などのキーワードが挙げられます。設立は1979年、時代によってレーベルカラーは変化していきますが基本的な世界観の構築はこれらのキーワードがどの時代においても踏襲されているでしょう。
レーベルの代表的なバンド「Cocteau Twins(コクトー・ツインズ)」はまさに耽美ド直球で、独自の世界を築いています。
また、「Bauhaus(バウハウス)」や「Dead Can Dance(デッド・カン・ダンス)」等のバンドのアートワークもゴシック的なビジュアル展開で、暗く、濃厚な世界観が醸成されています。これらのバンドは人気バンドとしてレーベル設立後の初期時代を支えました。
PIXIES(ピクシーズ)の登場
80年代後半にレーベルを代表する看板バンドである「PIXIES(ピクシーズ)」がデビューします。バンドは1988年に「Sufer Rosa(サーファーローサ)」を発表し、世界的な人気を得ます。人気獲得のために、4ADのアートワークも一役担った事は言うまでもないでしょう。
PIXIESの狂気で色彩を帯びた世界観をより一層際立たせます。PIXIESはオルタナティブ・ロック界で重鎮とされ、Radio Head(レディオ・ヘッド)やNIRVANA(ニルヴァーナ)、デビッド・ボウイにまで影響を与え、現在も数多くのフォロワーを生み出し続けています。
現在は、2008年に資本提供を受けていたベガーズ・グループの事業再構築が行われ、ベガーズ・バンケットとトゥー・ピュアの両レーベルが4ADに吸収されることになりました。現在も多くの優れたバンドが4ADからデビューしています。
ミュージックビデオも秀逸なものが多く、必見です。
この機会にジャケットを眺めなら4ADの音楽の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。