IKEAのデザイン開発と初の日本人デザイナー・中村 昇

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「北欧デザイン」は日本でも人気が高いですが、IKEAを生んだスウェーデンのデザイン力は世界的に評価が高く、政府も資金を拠出し、デザイナー育成を始めとするデザイン産業に力を入れています(H&M、VOLVOなどもスウェーデン発です)。

無印良品はデザイナーの名前を基本的に公表しませんが、IKEAはカタログや店頭のパネルには顔写真入りでデザイナーの名前を明記します。
デザイナーのモチベーションをあげるためにもこの方針を打ち出していると思うのですが、このような点から見ても、IKEAはデザイナーを大切にしていると考えられます。

IKEAの人気商品でもあるロッキンチェアーの「POÄNG/ポエング」は日本人デザイナー・中村 昇がデザインしました。
「POÄNG/ポエング」は全世界で3,000万脚売り上げたと言われます。

POÄNG/ポエング
POÄNG/ポエング

IKEAのデザイナーは現在100人以上いると言われています。
中村氏は日本人初のIKEA専属デザイナーで1973年から6年間、多くの優れた商品を開発しました。

IKEAは5つの大事な要素として

・機能性
・デザイン性
・サステナビリティー(環境に配慮した持続可能性)
・品質
・低価格

を挙げています。
IKEAではこれをデモクラティックデザイン<Democratic Design>と言います。
Democratic=民主的と訳せますが、“みんなのためのデザイン”という意味です。

そして商品開発の特徴として、まずプライス(価格)からデザインをしていくことです。
デザイナーは初めに価格を設定します。
価格設定後、プロトタイプをつくり、先に上げた5つの要素を全て満たすかどうかで製品の発売が決定されます。一つでも欠けていたら商品は世に出ません。

また、低価格の実現として「フラットパック」があげられます。
これは輸送にかかるコストを最小限に抑えるためなのですが、家具というものは多くが立体系で、例えばデスクなどを運ぶとき、空気の部分が多くあります。ですから積載効率が悪いので分解して小さく梱包するのです。

さらに、IKEAにはスウェーデンのエルムフルトに「イケア・テスト・ラボ」というものがあり、多種多様なイケアの商品の品質管理を行っています。
部門ごとに細かく分かれ、徹底的に厳しい耐久テストを行います。
布製品は何百回も洗濯され、家具は数万回の衝撃を与えるテストです。
このテストをクリアしなければ発売されません。

このような条件下で、中村氏は「POÄNG/ポエング」をデザインしました。会社からは「とにかくノックダウン(低価格で組み立て式)しろ」と命令を受けたそうです。
「ノックダウン」とは<組立式>の意味で、誰でも組み立てられる事です。
IKEA家具の説明書を見ると、全世界共通のため文章による説明はありませんが、イラストのみの解説で組み立てが可能な仕様となっています。

「POANG/ポエング」組み立て説明書
「POANG/ポエング」組み立て説明書

入社4年目に中村氏の「POÄNG/ポエング」が商品化されます。
機能性も十分に発揮されています。
元々、「APOÄNG/ポエング」の前身となる「POEM/ポエーム」は「おばあさんが暖炉の前で編み物をしながら座るような、快適で居心地のよい椅子を作りたい」という思いで作られています。

U字に曲げた合板のフレームは弾力性のある仕上がりになっています。
座ると心地よいしなりを感じることができ、長時間座っても疲れにくい構造になっています。

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デンマークのドクターが椅子の快適さの調査をしたことがあり、「POANG/ポエング」が最も高い評価を受けたこともあります。

以後、この商品は現在までにほとんどデザインを変えずに30年以上のロングセラー商品となります。

2016年には40周年を迎えた「POÄNG/ポエング」。
IKEAでは現在も改良を重ね続け無駄を削減し、フラットパックの容量は約1/2になったそうです。

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中村氏は御年79歳。
1978年に帰国してFurniture Design Nackaを設立し、家具デザイナーとして活動しながら現在では大学などで指導しています。

IKEA:「POÄNG/ポエング」